みやぎグリーンウォーカー

第8回 原油高と直接向き合う企業 東邦運輸倉庫株式会社

所在地 〒983-0035 仙台市宮城野区日の出町3丁目4-21
電話   022-284-2141
URL   http://www.toho-twc.co.jp/
取材日 平成20年8月18日(月

東邦運輸倉庫株式会社近年、石油価格が高騰し、社会の様々な人たちに影響が及んでいます。物価上昇が日用品にまで波及し、経済全体へ悪い影響が出ています。

一方で、石油価格が上がることで、効率の良い技術や方式が普及し、エネルギー消費量が減る。するとCO2排出や大気汚染が抑えられ、環境の悪化が食い止められる―。環境問題の側面から考えると、石油価格の上昇は、省エネルギーへのモチベーションにつながるかも知れません。
石油価格高騰の影響を直接受けている業種の一つが、物流業です。今回は東邦運輸倉庫株式会社にお邪魔して、原油高とどう向き合っているのか、常務取締役の伊藤利光さん、取締役総括部長の池村敏男さん、営業統括部東日本営業部部長代理の毛利浩さんにお話を伺いました。

東邦運輸倉庫は、東北の物流業では最大規模の老舗で、いくつかのグループ企業で東北地方全域をカバーしています。
経営理念である「最善な物流サービスの提供」をモットーに、できる限り効率が良い保管・運送サービスを、IT等を導入して構築している。しかし、それを顧客に受け入れてもらうためには、高品質な物流の維持継続により、信用を得なければならない―。原油高がエネルギー効率を押し上げるプロセスの現場では、原油高とサービスの品質向上の両方に対応しなければならない難しさがありました。


顧客と協力して効率を上げる

東邦運輸倉庫は、倉庫業とともに主にトラックを用いた貨物配送を行っています。メーカーから納品先(主に卸業者)までの配送が主要業務で、消費者のもとへ直接届ける宅配は殆ど無いとの事です。


伊藤さん
トラックを走らせるためには、多くの燃料が必要です。
効率化の工夫によって、燃料消費量は大きく減らすことができます。その中でも、特に「共同配送」は画期的な方式でした。

以前はそれぞれの顧客から依頼された商品に対して、専用のトラック等を用意して配送を行なっていました。なぜならば、お客様各社の商品を同じトラックの中に混載すると企業の情報が漏れてしまうと考えられ、嫌われていたからです。
したがって、それぞれの配送は独立して行なわれなければならないというのが暗黙の了解としてありました。
これでは、お客様一社ごとの荷物が少ない場合でも、トラックを丸々一台割り当てなければなりません。積載量の少ないトラックを何台も走らせることになり、エネルギーとしての手続き処理としても効率の悪い方法です。


池田さん
そこで、1996年10月から、大手食品メーカー3社と手を組み共同配送を始めました。複数の取引先の商品を同じトラックで運び、効率化を図りました。
東邦運輸倉庫のエンジニア部門が、大手食品メーカー3社と共同で3社の出荷データを1つのデータに集約して、東邦運輸倉庫のホスト内で納入先別にデータを振分けて、車輛台数を減らしていく、最適な配送情報システムを開発。ITを導入した点でも、先進的な方式でした。
共同配送には、いくつものメリットがあります。
(1)少ないトラック台数で多くの貨物が運べるので、燃料も人員も少なく済み、コストが安くなります。
次に、
(2)同じ時間でも多くの貨物が運べるので、配達できる時間が早くなります。納品先も複数のメーカーの商品がまとめて納品されるので受け入れ作業効率が上がります。
(3)トラック台数が減るので渋滞が緩和されます。また、ガソリン使用量が減りCO2の削減にもなります。


毛利さん
効率を上げることで、送り手・運び手・受手の全てにメリットができ、なおかつ環境負荷も小さくできる―共同配送は「利害が一致したからできた」のだと言います。
もちろん、顧客間で情報が漏れないよう、守秘義務契約を結び厳重に管理します。情報は漏れないことが少しずつ理解され、またコスト削減といったメリットが重視されるようになり、現在では十社近くが共同配送に参加しています。

ミスを無くさなければ、新方式は提案できない

しかし、『新しいサービスを始めました。参加してください』と取引先に頼んで、すぐに『はい、わかりました』となるわけではありません。

新しい方式に移行してもらうためには、品質の高い配送を続け、顧客に信頼を得ている必要があります。物流の品質とは荷受から保管、納品までの間で紛失や納品の手違いはもとより、破損・汚損が無く、商品が委託された状態が維持されている事、また、受け渡し時の運転士のマナーや納期を守ること。ミスやトラブルのリスクをいかに0にするかが課題になります。

「お客様は、完璧に出来て当たり前」だと考えます。物流業者に預けた商品は、そのままの姿で納品先に到着します。あるはずの姿が変わり果てていたら、お客様は怒ります。しかし、そのままの姿で届いたからといって、気分が格別に良くなるわけでもありません。
もし、現状で汚損破損が多発していたら、お客様からすれば、『共同配送よりもミスを減らしてくれ』となります。
高い物流品質を保っていなければ、効率の良い方法に切り換えてもらう交渉はできません。そうなると、物流業者は、燃料上昇幅を自社で負担せざるをえない状況となります。

「原油先物価格のピークは見えてきたが、現物価格まで安くなるのはまだまだ先の話。これからも原油高は続く。」自助努力のみで吸収できる上昇幅はすでに越えているので、航空輸送業界では以前から用いられている燃油コスト上昇分を輸送料金へ転嫁する「燃油サーチャージ」を2年前から始めているそうです。前記対策を行うと同時に、このような苦境を乗り切るためには、共同配送や発注の電子化といった業務効率改善も必要です。受け入れてもらえるよう、これからも積極的にお願いしていきたい、とのことです。

「段ボールも商品と思え」

さらに、品質に対する目は、食の安全、企業のコンプライアンス遵守等社会の目が厳しくなるにつれ、近年益々厳しくなっているそうです。
以前は、荷物を梱包する段ボールに、チョークで文字や記号を書くことがありましたが、今では非常識。中の荷物が無事ならそれでよいという態度の業者は、汚損・破損も多いのではないか、と思われてしまいます。「段ボールも商品と思え」と考える必要があります。

汚損・破損を起こしたら、当然、損害賠償になります。大きな取引を扱う企業ともなればその金額はそれだけ大きくなるのだそうです。加えて、取引先の心象を悪くして信頼を失い、また商品廃棄という大きなムダが生まれ、それと同時に環境負荷にも繋がります。
汚損・破損は、どう減らすのでしょうか。東邦運輸倉庫の対策の一つは「品質会議」。毎月グループ企業が集まり、数値化した品質データによって分析と再発防止策を講じます。また、年に一度は、お客様から同様の業務を行っている全国の同業者のランク付が行われ発表されます。
汚損・破損・納期遅れなど、ミスの項目ごとの発生確率が明らかになるので、誤魔化しがききません。「ビリになるのは信用を失い=仕事がなくなる、だから、現場には常に緊張感がある。」と言います。

「仕組み」を作る

このように「仕組み」を作ることで、業務は改善されます。「注意しよう」「丁寧に扱おう」と心がけるだけではうまく行きません。

東邦運輸倉庫では、今では輸送業界では常識となりつつあるデジタル・タコグラフ(デジタコ)の導入を積極的に進めています。これは、トラックに取り付けてエンジンの回転数や速度など記録するもの。
デジタコを装着すれば、燃費を悪くする急発進や速度オーバーが常に記録されます。乗務員がエコドライブ・安全運転に心がけているかどうか、点数(成績)で明らかにすることができます。デジタコで得られたデータを元に、乗務員間での情報共有や指導を行います。燃費向上や事故防止は、運転のやり方次第で大きく改善します。

しかし、エコドライブを完全に実施する事は難しい事。気象状況やお客様への納品時間等条件により運転も変わります。また、「キャビンの中は1人」だから、乗務員の意識に委ねる部分が大きく、精神論だけではうまくいかない場合もあります。
それでもドライバーを監視するのが目的ではなく、意識が形となって現れればそのドライバーの努力をきちんと評価してあげることができるのです。

環境配慮と収益の両立

東邦運輸倉庫は、大手との取引も多く、環境に配慮した輸送でなければ取引が難しいと顧客から言われてきました。顧客の企業イメージ向上のためには、業務委託先である運輸業者も、当然クリーンな企業でなくてはなりません。
また、輸送時の効率が向上すると、燃料使用量が減り、売上に対する経費が減るとともに、CO2排出量の削減にもなります。つまり、収益が改善されると同時に企業イメージも向上します。環境対策を行うことは一石二鳥なのです。

東北の物流業者では初めて、2005年には環境マネジメントシステムhttp://www.ecostage.orgを取得しました。エコステージは、第三者機関による環境経営認定システムで、段階的に環境負荷を削減していきます。これも、取引先からの紹介があって始めた取り組みです。

エコステージへの取り組みとして、まず廃棄物の削減を目標の一つに掲げました。そこで、ストレッチフィルムの圧縮機をレンタルし、圧縮したストレッチフィルムを有価物として販売しました。ストレッチフィルムは、トラックの荷揃えの際、荷崩れ防止のために、養生材として使います。1回使うと再利用は難しく、ゴミになってしまいます。
これまで支払っていたゴミ処理費は、かなりの金額になっていたそうです。今は圧縮機のリース料を支払っても、販売代金が入るので、以前の処理費と比較するとコスト削減が実現しているそうです。
その他エコステージの取り組みとしては、廃棄物削減の他に、節電、燃費効率化の省エネへの取り組み、コピー用紙削減、グリーン購入の促進の省資源への取り組みを行っているそうです。

乗務員の会議やデジタコの装着、環境マネジメントシステムの取得には、費用がかかります。「物流業界は利幅が小さく、積極的な設備投資は難しい業態」だそうです。
しかし、その中でもやりくりをして、積極的に取り組み一歩ずつ改善をしていきたいということでした。

■ 感想

吉良:取材中、できる限り効率の良いシステムを構築しようとする東邦運輸倉庫の姿勢が感じられました。その一方で、顧客と原油高の板挟みになり、苦労なさっていることも分かりました。もっと小規模な運輸業者だと、効率化のための投資が遅れ、更に厳しい立場に置かれているのではないでしょうか。
将来、原油価格高騰によってエネルギー効率が向上し、低炭素社会に近づくと思います。一方、そのプロセスの中で、しわ寄せが来てとても苦しくなる立場もあると感じました。
低炭素社会に移行するためのコストを、どれだけ多くの人で負担するのかということは、重要なことだと思いました。

大工原:東邦運輸倉庫の提供しているWVLS(ウェブ・ビジュアル・ロジスティック・システム)によって、取引先の企業が依頼した商品が現在どのような状況であるのかを常に監視できるようになっていました。
こういった事情からも、物流業界というものは常に他社の目にさらされ責任を問われる厳しい世界だと感じました。しかし、財を作り出す企業が不可欠なように、たしかに物流業者の存在も社会の中で不可欠な役割を担っているとわかったので、私としてはつねに意識され、もっともっと認められていくべき誇りある仕事だと思います。


取材メンバー自己紹介
吉良洋輔

東北大学文学部 行動科学専修二年
九州の大分出身ですが、東北の自然もすぐに好きになりました。環境と社会の関係について興味があります。


バックナンバー
  1. 第1回 コクヨ東北販売株式会社
  2. 第2回 富士ゼロックス宮城株式会社
  3. 第3回 東北緑化環境保全株式会社
  4. 第4回 日本紙パルプ商事株式会社 東北支社
  5. 第5回 協業組合 仙台清掃公社
  6. 第6回 トヨタ自動車東北株式会社
  7. 第7回 「いつでも見学できる処理工場を」株式会社 安部工業
  8. 第8回 原油高と直接向き合う企業 東邦運輸倉庫株式会社
  9. 第9回 「てんぷら油で車を走らせる」 株式会社オイルプラントナトリ
  10. 第10回 「EMS導入で「心構え」が変わった」 河北新報印刷株式会社
  11. 第11回 「広がるリサイクル部品のネットワーク」 株式会社三森コーポレーション
  12. 第12回 「建設業として環境に取り組む」株式会社深松組
  13. 第13回 驚きの「ライブオフィス」リコー東北株式会社
  14. 第14回 再生資源の価値、分別のコスト 株式会社 佐彦
  15. 第15回 「宮城県民の安全安心、快適な暮らしのための検査機関」(財)宮城県公衆衛生協会
  16. 第16回 「メディアパワーを有効活用して、LED普及に努める」(株)仙台放送L・E・Dソリューションズ
  17. 第17回 「大学生に伝える〜次世代の環境マインドの育成へ向けて〜」大学生活協同組合東北事業連合
  18. 第18回 「日本を支える〜地域建設産業の使命〜」 一般社団法人宮城県建設業協会
  19. 第19回 「お客様に感動される企業を目指して〜環境に優しいリサイクルとは〜」 株式会社サイコー
  20. 第20回 「私達はエネルギー消費の削減が仕事です!」 株式会社エコライフサポート
  21. 第21回 「窒素酸化物(NOx)を低減するエマルジョン燃料」 株式会社エヌ・エフ・ジー
  22. 第22回 「エコな笹氣」の継続」 笹氣出版印刷株式会社
  23. 第23回 「地域の資源循環と環境保全に貢献する仕事」 株式会社 国本
  24. 第24回 「ホテル・ショッピングセンター・農業の取組」仙台ターミナルビル株式会社
  25. 第25回 「ホテル・ショッピングセンター・農業の取組」仙台ターミナルビル株式会社
  26. 第26回  ニーズを捉えろ! アイリスオーヤマのモノづくり   アイリスオーヤマ株式会社

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