みやぎグリーンウォーカー

第9回「てんぷら油で車を走らせる」 株式会社オイルプラントナトリ

所在地 工場 〒981-1201 宮城県名取市下増田字広浦35番48
所在地 本社 〒981-1224 宮城県名取市増田三丁目4番3号
電話   022-382-2713
URL   http://www.opnatori.co.jp
取材日 平成20年8月18日

「てんぷら油で車を走らせる」

株式会社オイルプラントナトリ 仙台市内でのこと、その路線バスが走り去った跡には懐かしい匂いが残っていた。
私の故郷では、お盆の時期にはてんぷらを揚げるという習わしがある。ひとり暮らしを始めて以来、私は住んでいるアパートでてんぷらどころか揚げものをしたことすらない。そのため、その路線バスのマフラーから立ち上るてんぷらの匂いはとても懐かしく、鮮明に過去の記憶が思い出された。あの鼻の奥に残って、なかなか抜けてはこない、あの温かい匂いだ。
そのてんぷらの匂いの理由は、燃料にあった。使用済みの食用油からバイオディーゼル燃料(BDF)を精製し、それがバスを走らせている。今回取材したオイルプラントナトリはそのBDFを作っている会社である。代表取締役社長武田洋一さん、専務取締役大友義春さん、常務取締役星野豊さんにお話を伺いました。


武田社長

星野常務
BDFは「カーボンニュートラル」という考え方に基づいている、と教えてもらう。カーボンニュートラルとは「植物を燃やして放出される炭素は、育つ過程で大気から吸収されたものなので、大気中の二酸化炭素量は差し引きゼロ」という原理のことをいう。温室効果ガスとされる二酸化炭素の増減は、地球温暖化の防止に大きな影響を与える。

植物は光合成を行うことで二酸化炭素を吸収する反面、枯れると水と二酸化炭素に分解され空気中へ放出される。その二酸化炭素の循環はゆっくりと時間をかけて行われるために、地球上の二酸化炭素量はトータルで変わらない。
植物から燃料を精製して燃やした場合でも同じことで、空気中に二酸化炭素が急激に放出されるが、地球規模でみれば存在している二酸化炭素量は変化していないということになる。したがって、植物(バイオマス)から作られたBDFを燃やして使用したとしても空気中の二酸化炭素量は増加しないと見なされる。その意味においてBDFはカーボン(炭素)ニュートラル(差し引きゼロ)な燃料である。
しかし、これがガソリンや石油などの化石燃料の場合は異なる。化石燃料は、これまで地中深くにあって、地上表層に存在していなかったカーボンを含んだ燃料だ。それを掘りあげてきて使用し地球上に二酸化炭素を放出することは、空気中の二酸化炭素の絶対量を増加させる。したがってBDFは地球温暖化を防止するという点で注目され、また近年のエネルギー転換の流れを汲んだ新しいエネルギーとしても周囲の関心が高まっている。


「遊び心」で培った技術

株式会社オイルプラントナトリ 使用済み食用油からBDFを精製しているのがオイルプランナトリの主要業務かといえば決してそうではない。本来、オイルプランナトリは名取市で得られる豊富な地下水を利用した公衆浴場が前身だ。社会の変化に合わせて、銭湯の湯を作るための燃料を木屑から廃油へ変える。さらに関連する資源のリサイクルを行っていくうちに事業内容がそちらの方へ移行していった。現在では、廃油だけではなく産業廃棄物を回収・運搬し、再生処理を行ったのちに再資源化する事業を行う。
一般工場などから排出された汚泥、廃酸、廃アルカリは適切に処理しセメント工場などで使われる工業用水として再資源化している。セメント工場にとってみても、地下水を使用すればそれだけ費用もかかりまた地下資源の枯渇にもつながるために、リサイクルされた工業用水を使用することはメリットが多い。その他の残渣廃物も固形燃料に変換される。現在では、回収した産業廃棄物の98%の再資源化が可能となっている。


遠心分離機

プラント内部
その回収物の中に廃食油があり、昨今話題となっている使用済み食用油から精製するBDFも含まれる。
実は、オイルプラントナトリの精製プラントは、遠心分離機などを駆使しており、日本では最高水準の効率だという。しかし、最初はまったくのゼロからのスタート。身近に手に入るような鍋やドラム缶などで実験を繰り返した。自分たちで一から作り始め、創意工夫を凝らして試行錯誤をしたことで、これまで廃棄物処理で使っていた技術をBDFプラントに生かすことができた。

ISO14001を取得したことを皮切りにして「自社が保有する運搬車のエネルギーを、自分たちで作り出せたらおもしろいだろうな」という発想と社会のニーズに合致したタイミングがBDFに取り組むきっかけになった、と星野常務取締役は話してくれた。東北大学へ研究協力を求めて遠心分離機などのろ過技術を開発したが、それ以外では自分たちでディーゼルエンジンの車両を購入し、実験を重ねた。低気温ではBDFは凝固してしまうといった問題にも実際にBDFを入れた車両で雪山へ上ってみて、試行錯誤を繰り返して解決した。燃費や使い勝手といった面でも軽油となんら変わらないことを確かめた。できあいのプラントではなく、自分たちで一から作る「遊び心」があったから、独自の技術とノウハウが蓄積された。
プラントは、装置と装置をつなぐ配管が青や緑、黄色などに塗り分けられていてとてもカラフル。「冷たい機械」という雰囲気ではない。これは、それぞれの配管には何が流れているのかを視覚で即座に判断できる工夫だ。カラーリングしてあれば、自分たちで作った物だから、どこに何があるのか手に取るように分かる、と話す。
オイルプラントナトリでは1日最大7500リットルのBDFの精製が可能で、むしろ原料となる使用済み食用油の回収量が追いつかないほどとなっている。また、BDFには、含まれる成分の基準が設けられていて、これをクリアすることが品質の目安になる。ここでは、京都スタンダードをほぼクリアし、あと2、3の課題は残るが、より厳しいEU規格も概ねクリアしており、高い水準を維持している。


成功の秘訣は「そいつ・おもせ〜」


BDF給油所
精製したBDFの多くは、社内の廃棄物収集車で使用する。大々的に販路を拡大しているわけではない。いわば「自家消費」が中心なのだ。これには理由がある。
BDFは、収集にコストがかかる上、ビジネスとしてはまだまだ未知な部分が多いので売れる保証も無い。「やれば儲かる」というものではないそうだ。利益を上げるために始めても、きっと途中で失敗するだろう、という。
しかし、オイルプラントナトリは、すでに廃棄物の収集・処理事業をしていた。もともと、BDF原料の廃食油と、燃料が必要なトラックを持っている。プラントも自作できそうだ。BDFを作れば、自分たちが今持っているものを生かすことができる。そんなアイデアに対し、「そいつ、おもせ〜(それはおもしろい)」と感じ、楽しみながら実行したことが大事だったという。

社外への出荷は、ゆっくりと進めて、協力のネットワークを広げている。近隣自治体の給食センターから廃食油を集め、逆に公用車等へBDFを提供している。宮城交通では、環境への取り組みとして、試験的にバスで使用してもらっている。
今後も、BDF事業は少しずつ拡大していく方針だそうだ。武田社長は、これからも「大企業のやらないニッチな市場」を選び、「自分の得意分野で身の丈にあった事業」を行っていきたいと語った。地球環境だけではなく、地域社会にも貢献していければという理念に基づいていくという。

社長の夢の中には、近くの農家と協力して、BDF用の菜の花栽培をすることだと話す。名取市は、水田や畑が広がる田園地帯。いつかは工場の周りで菜の花を咲かせてもらい、住民の農家の方々の協力を頂きながら巻き込んでいきたい、そして本当の意味でのカーボンニュートラルを実現させたいという。
今年度の会社目標は「そいつ・おもせ〜」をキーワードに、仕事を楽しく、社員それぞれが主体として社内で活躍できるような仕組みが図られていた。従業員の提案を基にして作られたという、雨水を貯水してそれをトイレに利用するタンクの『雨水タメ太郎』や、オイルプラントナトリの頭文字をかたどった「OPN」とデザインされた花壇など、会社での生活をより楽しく充実したものにしようという試みに満ちていた。

■ 感想

大工原:正直、私の産業廃棄物に関わる仕事のイメージは、少し淡白なもので、オイルプラントナトリのやり方とは大きくかけ離れていた。むしろオイルプラントナトリはその業界として成功しているという企業というよりは、組織運営という観点からも優良な企業なのではないかという印象を持ち、とても興味深く思えた。
今回の取材を通して、オイルプラントナトリが実践しているようなグローバル社会への着眼点、環境に対する意識を高く持つことは個人にとっても言えることで、私自身に当てはめて振り返ってみたいと感じた。

吉良:BDFというと、最先端のハイテク技術で、大企業が巨額の投資をして開発しているものとばかり思っていた。しかし、オイルプラントナトリは、力で押すのではなく、自分の持つ物や技術を柔軟に組み合わせるスタイルで成功していると知り、目から鱗だった。
自分の持つ物を生かし、自分で培った技術を使うアイデアには、「巧みさ」と「若さ」を感じた。年配の方々から、その発想力を自分も見習いたいと思う。


取材メンバー自己紹介
吉良洋輔

東北大学文学部 行動科学専修二年
九州の大分出身ですが、東北の自然もすぐに好きになりました。環境と社会の関係について興味があります。


バックナンバー
  1. 第1回 コクヨ東北販売株式会社
  2. 第2回 富士ゼロックス宮城株式会社
  3. 第3回 東北緑化環境保全株式会社
  4. 第4回 日本紙パルプ商事株式会社 東北支社
  5. 第5回 協業組合 仙台清掃公社
  6. 第6回 トヨタ自動車東北株式会社
  7. 第7回 「いつでも見学できる処理工場を」株式会社 安部工業
  8. 第8回 原油高と直接向き合う企業 東邦運輸倉庫株式会社
  9. 第9回 「てんぷら油で車を走らせる」 株式会社オイルプラントナトリ
  10. 第10回 「EMS導入で「心構え」が変わった」 河北新報印刷株式会社
  11. 第11回 「広がるリサイクル部品のネットワーク」 株式会社三森コーポレーション
  12. 第12回 「建設業として環境に取り組む」株式会社深松組
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  14. 第14回 再生資源の価値、分別のコスト 株式会社 佐彦
  15. 第15回 「宮城県民の安全安心、快適な暮らしのための検査機関」(財)宮城県公衆衛生協会
  16. 第16回 「メディアパワーを有効活用して、LED普及に努める」(株)仙台放送L・E・Dソリューションズ
  17. 第17回 「大学生に伝える〜次世代の環境マインドの育成へ向けて〜」大学生活協同組合東北事業連合
  18. 第18回 「日本を支える〜地域建設産業の使命〜」 一般社団法人宮城県建設業協会
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  20. 第20回 「私達はエネルギー消費の削減が仕事です!」 株式会社エコライフサポート
  21. 第21回 「窒素酸化物(NOx)を低減するエマルジョン燃料」 株式会社エヌ・エフ・ジー
  22. 第22回 「エコな笹氣」の継続」 笹氣出版印刷株式会社
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