みやぎグリーンウォーカー

第10回「EMS導入で「心構え」が変わった」 河北新報印刷株式会社

所在地 仙台市泉区明通三丁目13番
電話   022-777-3881
URL   http://www.kp-insatsu.co.jp/
取材日 平成21年3月11日

河北新報印刷株式会社
左から 相沢さん、樋地さん、高山さん
かつて仙台ではスパイクタイヤによって粉じんが発生していましたが、市民運動によってスパイクは使用されなくなった、ということがあったそうです。その中で、河北新報の報道が大きな役割を果たした、という話を聞いたことがあります。

環境問題が注目を集める今、環境に関する記事を書くことも、新聞の重要な役目になっています。紙面の記事では、環境問題に厳しい目を向けて、社会の問題点を指摘します。

ただ、新聞社自身も環境問題にしっかり取り組まなければ、書くことに説得力はありません。だから、「環境問題を書くからには、自分もちゃんとしなくては」と、印刷部副部長の樋地正彦さんは言います。

今回お伺いした河北新報印刷では、河北新報・関連するフリーペーパーなどに加え、聖教新聞の委託印刷も行っています。東北各県で配達される河北新報は、全てここで印刷されます。

ここでは、環境マネジメントシステムを取得したことが、社会的責任を果たす足がかりになりました。特に、社員1人1人の意識が変わったことは、大きな成果だったそうです。

樋地さん・印刷部主任の相沢浩之さん・総務部長の高山力男さんの3人からお話を伺いました。また、印刷部のお二人には、工場の案内もして頂きました

工場の様子

河北新報の印刷設備は、昔は五橋の本社ビルにありましたが、本社の印刷機が旧式化したことを契機に、郊外に移転することになりました。
平成14年に分社化し、15年には現在の印刷センターに移転しました。導入当時で最新式の輪転機を備えています。

お伺いしたとき、印刷工場ではちょうど夕刊を印刷していました。中は、とてもハイテクな印象。工場の心臓部は、1階から2階までの高さがあるオフセット輪転機。細かいモーターがたくさん回転し、次々とカラーの新聞が印刷されていました。


特に驚いたのが、ロール紙を担いで自分で動き回るロボット。プログラムされた通りに動き、1m近いロール紙を輪転機まで持って行きます。

ロール紙から新聞が印刷され、積み込まれるまでの工程は、かなりの部分が自動化されています。そのため、工場内の従業員はまばらです。役員も含め、社員は全部で96人だそうです。

輪転機はモーターなどが多数あり、工場全体で大量の電力を使います。平成19年度は800万キロワットを使用し、月に1300〜1400万円の電気代がかかります。電気使用量の削減には特に努力しているそうです。


建設当初からの環境対応

印刷センターは、設計当初から、「環境との共存」をコンセプトに建設されました。そのため、環境負荷を低減できる設備が工場内に設置されています。

例えば、雨水貯水タンクを設置したり、氷蓄熱空調システムを採用したりしています。雨水はトラックの洗浄・トイレの排水・植栽の水やりに使われます。氷蓄熱空調システムは、電力需要の少ない夜間の電力を使用するので、電力消費ピーク時は電力を使わずに済みます。

また、原料には大豆インク・古紙配合紙を使用しています。大豆インクは、石油由来成分の一部を大豆油に置き換えたもので、人体に有害な成分が少なくなっています。速乾性のインクでもあるので、工場内でマスクが必要な区域はほとんどありません。(ただ、モーターの音が大きいので、耳栓は必要です。)

原料紙の古紙配合率は約70%です。バージンパルプの木材も、適切に管理された森林から伐採しており、FSCの認証を受けているそうです。
ただ、大豆油や古紙は、出来るだけ多く配合しているものの、100%にすることは品質上できないそうです。


EMS取得で「心構え」が変わる

しかし、当初は細かな所までの配慮は足りていなかった、と言います。例えば、ごみの分別は徹底されておらず、一緒に可燃ごみになっていたそうです。環境負荷低減を目指していても、社員の取り組みはどうしてもぎこちなく、「やらされている」感じがあったそうです。

他方、環境マネジメントシステムの取得を検討していたそうです。ただ、有名なISO14001は取得費用が高く、二の足を踏んでいました。

そんな中、地域限定型の「みちのくEMS」というシステムがあると、河北新報の記者から話を聞き、これを取得することになります。「みちのくEMS」は、中身はISO14001と変わらず、取得費用も10分の1程度に抑えられます。ネームバリューはISO14001には及ばないものの、十分魅力的な内容だったそうです。

平成18年には、みちのくEMSを取得。そのプロセスで、社内の雰囲気が大きく変わったそうです。もしもEMSを取得していなければ、当初のまま平行線をたどり、なあなあで終わっていただろう、と言います。

現在、紙・プラスチック・ビン・カン・ペットボトルといった一般ごみや、工場から出る包装フィルム・段ボールなども、細かく分別。冷暖房のリモコン・トイレ・ドアには、節電・節水を呼びかける張り紙がされています。効果は順調に上がり、水や電力の消費量は少しずつ減っているそうです。

「(達成された)数値目標はいろいろあるけれど、一番変わったのは心構え。」と、高山さんは言います。まず、廃棄物の量が減ったり、エネルギーのコストが抑えられたりといった効果がありました。それと同時に、社員が「ごく自然に」ごみ分別や節電節水に取り組むようになったそうです。気持ちの変化はとても貴重な成果だった、と強調していました。

また、汚れなどで商品にならない損紙が、どうしても発生します。損紙は最大の「無駄」です。この対策も、とても努力しているそうです。「損紙対策委員会」を設置し、月1回、検討会議を行っています。
工場内には毎月の損紙率を掲示し、成果が目に見えるようになっていました。先月の損紙率は2.43%で、業界でもかなり低い値だそうです。
これからもEMSを更新し、さらに改善を続けていきたい、とおっしゃっていました。

環境負荷低減は、新聞社としての責任

環境への影響といった社会の問題点を指摘することは、新聞社の大きな仕事の一つです。だから、自分自身がいい加減なことはできない、と言います。河北新報グループ全体でも、「かほくエコ08」と銘打って環境負荷の低減に取り組んでいるそうです。

河北新報印刷は、グループの中でもっとも環境負荷が大きい部分です。それだけに特別な努力が必要だ、と考えています。

また、不祥事を出すことも、なんとしてでも避けなければなりません。環境への配慮だけでなく、コンプライアンス(法令遵守)にも細心の注意を払い、法改正は欠かさずチェックしているそうです。一般・産業廃棄物は、さまざまな業者に委託しています。そこで、毎年処理工程を見学し、適切に処理されているか確認します。
河北新報印刷の場合、「新聞社としての責任感」が、環境問題に取り組むモチベーションになっていると感じました。


■ 感想

今回のインタビューでは、EMS取得の話が特に印象的でした。ISO14001などの認証システムは、環境負荷低減に取り組んでいることの「証明」だけでなく、少しずつ問題を改善するサイクルを作ったり、スタッフの考え方を変えたりする上でも意味があるようです。 ごみ分別や節電は、習慣性のある行動で、一度きっかけがあればかなり定着する、という説を聞いたことがあります。河北新報印刷さんでは、会社の中だけで「良い習慣」を作ることは難しくても、外部のツールを使うことが「きっかけ」となっていました。

また、以前のインタビュー先で「会社でEMSを取って、家でも電気をこまめに消すようになった」という話や、本で「子どもが学校でごみ分別について教わり、その子の家庭に習慣を持ち帰った」といった話も聞いたことがあります。

職場がEMSを取ることで、家庭などの他の場所にまで波及しているのかも知れません。「習慣の定着」説が当てはまると考えれば、大変興味深く思いました。

[グリーンウォーカー]メンバー紹介!

大学生が会員の取材にお伺いし、HPに掲載します。取材希望の方は事務局までお申込ください。

吉良洋輔

吉良洋輔東北大学文学部 行動科学専修4年
趣味:料理、自転車、プログラミング
取材に対しての抱負:
取材を始める前は、ただ消費者として商品や生産者に対して厳しい視点を持って行動しようと努力していましたが、企業の方々の考えをお聞きしているうちに、供給サイドの事情や考え方にも想像力を働かせることができるようになったと思います。取材を通して、自分自身がより良い選択のできるようになると同時に、自分の感じたことを他人に発信できるようできたらと思います。


大工原 征司

大工原 征司東北大学文学部 行動科学研究室3年
趣味:サッカー・いろいろな観察
取材に対しての抱負:
これまでも日々を過ごす中で、私は世間知らずな人間だとたびたび痛感することばかりでした。それでも、このグリーンウォーカーのような機会を与えていただけたことをとても幸運に思い感謝しています。社会や企業の現実を環境という切り口から捉えることで、見えてくる事実や可能性を私自身と結びつけ、無知でありながらも有機的に社会を見つめなおしていけたらと思っています。


バックナンバー
  1. 第1回 コクヨ東北販売株式会社
  2. 第2回 富士ゼロックス宮城株式会社
  3. 第3回 東北緑化環境保全株式会社
  4. 第4回 日本紙パルプ商事株式会社 東北支社
  5. 第5回 協業組合 仙台清掃公社
  6. 第6回 トヨタ自動車東北株式会社
  7. 第7回 「いつでも見学できる処理工場を」株式会社 安部工業
  8. 第8回 原油高と直接向き合う企業 東邦運輸倉庫株式会社
  9. 第9回 「てんぷら油で車を走らせる」 株式会社オイルプラントナトリ
  10. 第10回 「EMS導入で「心構え」が変わった」 河北新報印刷株式会社
  11. 第11回 「広がるリサイクル部品のネットワーク」 株式会社三森コーポレーション
  12. 第12回 「建設業として環境に取り組む」株式会社深松組
  13. 第13回 驚きの「ライブオフィス」リコー東北株式会社
  14. 第14回 再生資源の価値、分別のコスト 株式会社 佐彦
  15. 第15回 「宮城県民の安全安心、快適な暮らしのための検査機関」(財)宮城県公衆衛生協会
  16. 第16回 「メディアパワーを有効活用して、LED普及に努める」(株)仙台放送L・E・Dソリューションズ
  17. 第17回 「大学生に伝える〜次世代の環境マインドの育成へ向けて〜」大学生活協同組合東北事業連合
  18. 第18回 「日本を支える〜地域建設産業の使命〜」 一般社団法人宮城県建設業協会
  19. 第19回 「お客様に感動される企業を目指して〜環境に優しいリサイクルとは〜」 株式会社サイコー
  20. 第20回 「私達はエネルギー消費の削減が仕事です!」 株式会社エコライフサポート
  21. 第21回 「窒素酸化物(NOx)を低減するエマルジョン燃料」 株式会社エヌ・エフ・ジー
  22. 第22回 「エコな笹氣」の継続」 笹氣出版印刷株式会社
  23. 第23回 「地域の資源循環と環境保全に貢献する仕事」 株式会社 国本
  24. 第24回 「ホテル・ショッピングセンター・農業の取組」仙台ターミナルビル株式会社

前のページへ戻る>>


ページの先頭にもどる

Copyright (C) 2006 Miyagi Green Purchasing Network. All rights reserved.
掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。
リンクについて