みやぎグリーンウォーカー

第11回「広がるリサイクル部品のネットワーク」 株式会社三森コーポレーション

所在地 仙台市宮城野区岩切三丁目2-24
電話   022-25-1878
URL   http://www.3mori.co.jp/
取材日 平成21年8月17日

新車は話題になるけれど・・・

河北新報印刷株式会社 私の実家で、某ハイブリッド車を買おうか、という話が持ち上がりました。今の車はもう10年以上乗っていて、騙し騙し乗っていますが、あちこちにガタが来ています。整備工場では、今の車検が切れたらもう買い換えた方が良い、と言われてしまいました。

今、自動車と言えば、ハイブリッド車や電気自動車など、いわゆる「エコカー」が、とにかく話題になっています。日本の自動車メーカーの研究開発が進んでいたこともあり、実用的な新型車が次々と発売されています。価格は手の届く範囲、高燃費だから維持費が安く、そして環境にも良いということで、新車の売り上げは不況知らずだそうです。

その一方で、今まで乗ってきた車はどうなるのだろう、とも思います。日本全体でも、売れた新車とほぼ同じ数だけ、寿命を終えた自動車があるはずです。低燃費車への乗り換えが「エコ」だと言います。新車での「エコ」は低燃費ですが、廃車の「エコ」は何なのでしょうか。

今回お伺いしたのは、廃自動車の解体と中古部品販売を行う三森コーポレーションさんです。お話をして頂いたのは、代表取締役の守屋隆之さんと、生産部主任でISO委員長の早坂茂樹さんです。

リサイクル部品を普及させること自体がエコ


廃車として持ち込まれた自動車は、まず中古部品のエンジン、ミッションやまだ使える部品を取り外します。そして残った部分はスクラップされて、鉄などの金属原料にされます。

スクラップにされる部分が多いほど、シュレッダーダストと言われる、処理が難しいプラスチックごみが多く出ます。また、金属原料にしてしまうと、一旦溶かして作り直す分、余計なエネルギーが必要になり、CO2が多く排出されます。リサイクルよりもリユースの方が良いのです。(写真:イスラエルに輸出される中古エンジン。中古部品として流通できてなければ、ただのくず鉄になります。)

だから、「たくさん売ればゴミが減る。(環境負荷低減は)商売に直結している」と言います。なるべく多く中古部品として活用することが、環境への影響を抑えることになります。

同時に、環境保護の流れから、中古部品市場はこれからより大きくなります。一方、ただ単に自動車をスクラップにしているだけでは、事業成長の見込みはなく、追いつめられてしまいます。三森コーポレーションは、中古部品のリサイクルに将来を見出しています。


ネットワーク経由で部品が流通

一台で数万点あると言われる自動車部品。しかも、車種が変われば部品の種類も異なります。膨大な種類の中から整備工場へ必要な部品を届けるのは、容易ではありません。

これを解決するのが、コンピューターを用いたデータベースと業者間ネットワーク通信です。解体業者が中古部品をデータベースに登録することで、どの業者にどの部品があるのか、瞬時に分かります。

このネットワークがあるので、解体をして部品を供給するだけでなく、中古部品の取り寄せ・販売も同時に行うことができます。整備工場から部品の注文があれば、ネットワークを通し、すぐに見つけ出すことができます。整備工場とは、廃車を受け取り、中古部品を供給する、という双方向の取引になります。(写真:丁寧に梱包されて発送を待つ部品)
部品の互換性には微妙なクセがあり、人のカンに頼らなくてはならない場合があります。そのために、「フロント」と呼ばれる人が中古部品の注文を受け、データベースを使って部品を探し出します。重要なポジションでもあります。

多くの解体業者がネットワークに参加しており、現在は9つのネットワーク団体があるそうです。実は、守屋さんは、コンピュータ・ネットワーク立ち上げ人の1人で、現在はNPO法人JARAの副理事長をしています。

丁寧に解体して、中古部品をストック

工場では、ちょうど「ハリアー」が解体されていました。写真は、接着剤に超音波を当てて熱で溶かし、窓ガラスを外す作業。部品を傷つけないよう、丁寧に分解します。1日毎におよそ20台強が搬入されます。

廃車が持ち込まれたら、まずデータベースに型番を入力して、部品情報を検索します。すると、需要があって売ることの出来る部品の一覧が出てきます。これに従って、部品を取り出します。

倉庫には大量の部品。1日に100点前後の部品が出入りするそうです。お伺いした倉庫には1万点の部品があります。ここの他にも、3カ所の倉庫があるそうです。

環境への取り組みと事業が連動する、中古部品の事業。しかし、「はじめのころは、環境産業になるとは思ってもいなかった」と言います。今のような形になるきっかけは、広い人脈を持っていたことでした。

きっかけは、思い切って飛び込んだこと

三森コーポレーションの前身は、守屋さんが大学4年のころにアルバイトをしていた、自動車解体屋でした。ご夫婦で経営しており、解体の手伝いをしていたそうです。
大学卒業後は、そのまま就職。しかし、その年に会社は廃業することになってしまいます。このとき守屋さんは、友人を集めてのれん分けをします。昭和55年の4月に入社し、10月には独立でした。

苦労しながらも会社を経営して5,6年経った頃、転機が訪れます。円高によって、鉄くずが暴落したのです。

まだ、車体の90%以上を鉄くずとしてスクラップにしていたころ。中古部品の取り扱いは、注文があった時に置いてある車体からもぎ取る程度で、ほとんどありません。鉄くず暴落によって、会社が立ち行かなくなりました。

その頃、九州でリサイクル部品の流通ネットワークが発足します。守屋さんは、「鉄くずやっていてもどうせ駄目だから」と、東北では初めてネットワークに参加。さらに、東北地方の窓口として、解体業者を参加させるため、遠くは北海道まで飛び回ったそうです。

当時は、インターネットもそれほど普及していない時代。コンピューター・ネットワークに接続して中古部品を流通させるという事業の営業は、とても怪しまれました。「ネットワークの参加費を払ったら、そのまま九州に逃げられてしまうんじゃないか」という雰囲気だったそうです。

苦労しながらも、ぽつぽつと参加業者が見つかり始めます。軌道に乗っていくと、守屋さんはネットワークの副会長を務めるようになります。ネットワークを広げていく中で、一般ユーザーも部品を検索できるWebサイトの運用や、メーカー・損保の修理工場との提携も始めます。南は九州・北は北海道まで飛び回っていました。

ネットワークに多くの解体業者が参加すればするほど、中古部品の流通が増えます。また、解体業者・一般ユーザー・修理工場の3チャンネルを持つことも欠かせないそうです。守屋さんは、「いろんなことをやると、楽しい」と言います。最近では、海外との取引も行っています。様々な人とつながることで、中古部品市場での取引は増え、リサイクル率も向上していきます。

最近では、この業界で中古部品を使うことで削減できたCO2の量を数値化する「グリーンポイント」を立ち上げたそうです。これは大学と連携して実現したもので、一般ユーザーに中古部品をアピールすることが目的です。これからは、特に一般ユーザーの認知度を上げていくことが課題だそうです。


「クリーンな中古部品」を作るために

ゴミやエネルギー消費を減らし、CO2を削減するリサイクル部品。中古部品の売りの一つは「環境負荷の小ささ」です。解体プロセスで環境汚染が起きていたら台なしだということを、守屋さんは昔から言ってきたそうです。自動車部品を取り出す解体業は、「どうしても公害になりやすい職種」です。また、ISO14001などを使って、しっかり環境管理をすすめなければなりません。

自動車を解体する時は、
●エアコンの冷媒として使われるフロン
●タンクなどに残っているガソリン
●エンジンなどに含まれるオイル類
●ラジエーターに入っている不凍液
などの有害物質が出てくるので、適切に処理したり回収したりしなくてはなりません。

現在は、自動車リサイクル法が施行され、解体業者は自治体から許可を取る必要があります。適切な処理を行うことが要求されるので、少なくない数の業者が許可を取れず廃業に追い込まれる業者もあります。

今でこそスタンダードになりましたが、三森コーポレーションは法規制の前から、有害物質対策に取り組んできました。

「これくらいなら…」を無くす

ISO14001を取得する時は、とにかくマニュアル作りで試行錯誤したそうです。はじめのうちは、マニュアル通りに作業をしても基準値を超えてしまうので、何度も繰り返して改善をすることに。また、人為的なミスを防ぐために、誰が見ても分かる図解マニュアルを作っています。特にフロンは、ホースを間違って切ると放出されてしまうので、車が来たら真っ先に抜くそうです。

社員全員が仕組みを理解してもらうため、ISOの実施委員は交代制で行っています。覚えた頃には交代になってしまうので、会社としては時間が掛かり大変です。それでも、みんなで環境について勉強していくため、この方式を採っています。

新型車になっても、なんとかなる

近年話題になっているハイブリッド車や電気自動車は、部品のリサイクルはできるのでしょうか。新型の自動車について、尋ねてみました。

確かに、新型車のリサイクルは難しい。それでも、技術を磨くことで身につければ、対応することはできるそうです。
例えば、近年は電気系統の比率が大きくなる傾向で、エンジンとは違った技術が必要とされます。電子制御ディーゼルエンジンが初めて持ち込まれたときは、点火させることができず、とても焦ったそうです。電子回路の一部に組み込まれていなければ、動作しないためです。しかし、しばらくすると、エンジン単体で動作させる技術が普及。電子部品のリサイクルも、技術の対応が追い付けば無理な話ではないそうです。「将来は、電子モーターが(中古部品市場に)並ぶでしょう」と言います。

一般ユーザーが中古部品を買う文化を

廃車の部品リサイクル率は、かつてに比べ上がりましたが、それでもまだ車体の65%がスクラップになります。中古部品の需要が増えれば、今まで取らなかった部品も流通できるようになり、リサイクル率はもっと上がります。

日本では、あまり知られていない中古部品。一方、自動車文化発祥の地アメリカでは、中古部品を使った自動車修理が広く行われています。一般ユーザーが中古部品を買い、自分で修理することも珍しくありません。

自動車修理を工場に頼むときは、「リサイクル部品、ありますか?」と尋ねる人が増えて欲しい、といいます。ほとんどの場合、新品と比べて品質は変わらないし、部品代は半分近くに抑えられることもあるそうです。

なるべく多くの人に、リサイクル部品について知って欲しい。そんな思いから、業界では子ども向けの絵本も作っているそうです。「いつかは、リサイクル部品が普通に使われる『文化』が出来て欲しい」と、おっしゃっていました。

[グリーンウォーカー]メンバー紹介!

大学生が会員の取材にお伺いし、HPに掲載します。取材希望の方は事務局までお申込ください。

吉良洋輔

吉良洋輔東北大学文学研究科行動科学専攻修士1年
趣味:料理、自転車、プログラミング
取材に対しての抱負:
取材を始める前は、ただ消費者として商品や生産者に対して厳しい視点を持って行動しようと努力していましたが、企業の方々の考えをお聞きしているうちに、供給サイドの事情や考え方にも想像力を働かせることができるようになったと思います。取材を通して、自分自身がより良い選択のできるようになると同時に、自分の感じたことを他人に発信できるようできたらと思います。


高橋良知

高橋良知東北大学文学研究科 中国語学中国文学専攻分野修士1年
趣味:尺八、散策
取材に対しての抱負:
買い物袋の有料化、エコ箸の普及など、私たちの身近なところにエコの取り組みが広がっています。私たちが普段目にすることができないところでも、企業のみなさんは多くの環境対策をされています。今回、実際に地元の企業の方から、環境への取り組みをお聞きする機会に恵まれました。それぞれの企業は、驚くような工夫と努力をされています。企業の方々の貴重なお話と思いを大切に受けとめ、記事を書いていきたいと思います。


バックナンバー
  1. 第1回 コクヨ東北販売株式会社
  2. 第2回 富士ゼロックス宮城株式会社
  3. 第3回 東北緑化環境保全株式会社
  4. 第4回 日本紙パルプ商事株式会社 東北支社
  5. 第5回 協業組合 仙台清掃公社
  6. 第6回 トヨタ自動車東北株式会社
  7. 第7回 「いつでも見学できる処理工場を」株式会社 安部工業
  8. 第8回 原油高と直接向き合う企業 東邦運輸倉庫株式会社
  9. 第9回 「てんぷら油で車を走らせる」 株式会社オイルプラントナトリ
  10. 第10回 「EMS導入で「心構え」が変わった」 河北新報印刷株式会社
  11. 第11回 「広がるリサイクル部品のネットワーク」 株式会社三森コーポレーション
  12. 第12回 「建設業として環境に取り組む」株式会社深松組
  13. 第13回 驚きの「ライブオフィス」リコー東北株式会社
  14. 第14回 再生資源の価値、分別のコスト 株式会社 佐彦
  15. 第15回 「宮城県民の安全安心、快適な暮らしのための検査機関」(財)宮城県公衆衛生協会
  16. 第16回 「メディアパワーを有効活用して、LED普及に努める」(株)仙台放送L・E・Dソリューションズ
  17. 第17回 「大学生に伝える〜次世代の環境マインドの育成へ向けて〜」大学生活協同組合東北事業連合
  18. 第18回 「日本を支える〜地域建設産業の使命〜」 一般社団法人宮城県建設業協会
  19. 第19回 「お客様に感動される企業を目指して〜環境に優しいリサイクルとは〜」 株式会社サイコー
  20. 第20回 「私達はエネルギー消費の削減が仕事です!」 株式会社エコライフサポート
  21. 第21回 「窒素酸化物(NOx)を低減するエマルジョン燃料」 株式会社エヌ・エフ・ジー
  22. 第22回 「エコな笹氣」の継続」 笹氣出版印刷株式会社
  23. 第23回 「地域の資源循環と環境保全に貢献する仕事」 株式会社 国本
  24. 第24回 「ホテル・ショッピングセンター・農業の取組」仙台ターミナルビル株式会社
  25. 第25回 「ホテル・ショッピングセンター・農業の取組」仙台ターミナルビル株式会社
  26. 第26回  ニーズを捉えろ! アイリスオーヤマのモノづくり   アイリスオーヤマ株式会社

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