「エコ座談会 Vol.15」

平成27年に富谷町長として就任、翌年の市制移行にともない初代市長となった若生裕俊氏。さまざまな行政サービス・環境施策を矢継ぎ早に打ち出し、活況ぶりをアピールする富谷市がめざす方向とは? 「待機児童ゼロ宣言」の発表を間近に控えた市長にお話を伺いました。

●ユネスコスクールについて

猪股
ユネスコスクール(日吉台小学校)(提供:富谷市)持続可能な開発のための教育(ESC)への取り組みも、富谷市教育委員会が熱心だと聞いています。現在も継続しているのでしょうか。また、ユネスコスクールにも積極的でしたよね。
若生
そうです。私が町長に就任して真っ先に取り組んだのがユネスコスクールです。町内すべての小・中学校のユネスコスクール登録を進めていましたが、町から市になるさいに、やり直しになってしまいました。しかし、もうじき正式な登録が完了し、その段階で富谷市の教育の大きな柱になると考えています。
山岡
生徒・先生・保護者すべてが一丸となり熱心という印象です。 ユネスコスクール含め持続可能な環境教育と地域づくりに関しては、環境省と文部科学省ともに歩み寄りESD活動支援センターを立ち上げ全国に8か所展開しております。東北地方ESD活動支援センター(仙台市)で企画運営委員をNPO法人 環境会議所東北が務めていますが、宮城県内では気仙沼市教育委員会と富谷市が積極的にESDに取り組んでいる印象があります。

●環境への意識づけについて

猪股
宮城県は平成16年にみやぎグリーン購入ネットワーク(みやぎGPN)を立ち上げ、環境会議所東北が運営を宮城県から委託を受け行政や事業者への普及啓発、会員拡大に努めてきました。富谷市は平成28年3月31日に当ネットワークに入会していただき1年が経とうとしていますが、グリーン購入について、庁内での取り組みや意識されている点、今後の計画などを聞かせてください。
若生
過去に富谷市はISO14001(環境マネジメントに関する国際規格)を取得していましたが、ある段階でやめています。そこで何が起きたかというと、ISO取得時、帰宅する職員の机上は整然と片づけられているなど、そういうところが徹底されていたのですが、やはり年月が経つにつれて崩れていきました。そのほかにもやめた理由はあったと思うのですが、ISOを維持すること自体が目的になってしまい、費用もかかるということでしょう。
山岡
人間って“縛り”がないとダメなのでしょうね。実際にほかの自治体でもISOの仕組みを維持していますと言いながらも、内部で形がい化が進んでいます。外部からの刺激がないためでしょうか。
猪股
大学でも同じことが言えます。
山岡
ISO14001を卒業したとしても環境マネジメントシステムを生かし、ISOの審査会社に審査を委託するのではなく、外部の有識者に審査を依頼し受ける方法を取り入れ、内部監査を実施する方法をとっている自治体があります。その結果、なん百万円という審査時の負担がなくなり環境マネジメントシステムは維持でき持続可能な取り組みをつづけています。
若生
そうした面では、環境に対する職員の意識をどう変えていくか? 日々の意識づけが大事です。
猪股
いったん身に付いてしまえば、そうそう変わるものではありませんからね。そして、環境への市民行動としてグリーン購入は容易に取り組めるものです。政府が掲げる「2030年度に2013年度比で26%のCO2削減」は、市民の理解と実践がなければ達成できません。そこで、市民向けの取り組みや普及啓発についての計画などありますか。
若生
私は、市制施行を機に「ベッドタウンからの脱却」をひとつのテーマにしました。べつにベッドタウン自体を否定するわけではなく、仙台への依存過多は持続可能な状態とは言い難いため、産業基盤をしっかり確立したうえで自立をめざさなくてはならない。そのためには中心となる事業所が必要なので、企業の創業支援を含めたプロジェクトを用意しました。

●「待機児童ゼロ宣言」について

若生
待機児童ゼロ宣言(提供:富谷市)富谷市は、おそらく宮城県でいちばん、いや東北でもいちばん子どもの比率が多い街です。そのため、子育て支援を最優先にしてきました。ハード/ソフト両面から支援をおこなっており、ちょうど今日も、子育て支援センター「とみここ」が開所1周年ということで記念コンサートを開催しています。そしてなんといっても、平成30年4月以降に待機児童が解消されたとして、3月27日には「富谷市、待機児童ゼロ」を正式に宣言します。
山岡
素晴らしいです。
若生
市長として就任した当初は、およそ80人の待機児童がおり、仙台のつぎに多い状況でした。しかし、ただ保育所を建てればよいという問題ではなく、「保育士が確保できなかったので受け入れできません」で済む問題ではないので、本当に苦労しましたよ。平成28年の春に保育園をひとつ設け、その翌年にはふたつめを用意したのですが、事業者を公募しても保育士不足によって受託事業者の応募がなく、ようやく開園しても保育士が集まらなかったり、施設のキャパシティーは十分にあるものの、定数いっぱいまで子どもが預かれない状況でした。これはいままさに社会問題となっている部分ですから、今回、民間の事業者からの全面的なバックアップも含め、みんなが必死になって保育士を探しました。あと、たとえば「もう少しがんばって、数名の0歳児を追加で受け入れます」といった積極的な協力も大きいです。これは、ハード面の問題ではなくてソフト面、保育士の気持ち、みんなの真剣な協力がないと解決できない問題です。今回、富谷市が待機児童ゼロを達成できたのは、みなさんの協力・努力の結果なのです。
山岡
子どもが大きくなり子育てママを卒業した経験者や子育てから離れた人が、つぎの世代のために何かできることでお役立ちするという機運があったのですね。
猪股
さらには住環境もよくないといけません。保育士にとっても住環境が悪ければ通勤に時間がかかったりします。待機児童ゼロを実現したいま、その状態を維持するのがたいへんになりますね。
若生
そうです。まずは達成できた。これをいかに維持するのかが重要です。
猪股
自転車操業になって保育士のところに負担が集中すると、その人が折れて将棋倒しになってしまうので、負担が分散できるよう広く連携が組めるといいですね。
若生
みんなで協力しあって、というのがいいのです。富谷市はコンパクトなので役所・市民・事業所、みんなの距離が近いですからね。つねにおたがいの顔が見える関係、そこが富谷のよさなのです。
山岡
そうした長所を活用して、生かしきっているところが素晴らしいと思います。

●富谷市の未来像

山岡
富谷市の遠景(上桜木・シンフォニータワーからの団地)(提供:富谷市)就任してどれくらいになるのでしょうか。
若生
3年が過ぎました。
山岡
これまでの功績から見るともっと長くおやりになっているかと思うくらいです。
若生
今回、市制施行にあたって、市になることが目的ではなく、どんな市を創るかが大事だと思い、その事を重視しました。市民のみなさまからアンケート調査をしたさいに、約9割の住民のみなさんが「富谷市に今後も住みつづけたい」と言ってくれました。みなさまが考える富谷市の魅力には大きく2つあって、いちばん多いのが「子育て環境」、ついで「緑豊かな自然環境」なのです。したがって、富谷市を「住みたくなるまち日本一」にするためには、この緑豊かな環境をいかに守っていくかというのが大きなテーマであり、それが市政に反映されたことになります。
猪股
住環境と自然環境を整えてはじめて魅力的な街になると……。
しかも自然環境については「保全」ではなく「維持」、資産として有効活用しながらつぎの世代に引き継いでいくという考えですね。
若生
はい、そういうことになります。
山岡
言うのは簡単ですが、できないのが世の常。市長みずからがそういう考えをもっているのはたいへん頼もしいことです。
猪股
やっぱり、仙台という都市部のそばにある以上、どういう街づくりをしていくか? コンセプトが重要です。私の大学にも富谷から通う職員が多くいますが「結構、時間がかかるよね」と言いつつも、1時間もあれば十分に帰宅できる好立地ですからね。さらに市長が言われたように、住環境と自然環境がさらに充実していけば、より住みよい街になりますからね。
山岡
本日は富谷市のお取組みをお話しいただき、ありがとうございました。富谷市の今後がとても楽しみになりました。

富谷市役所
宮城県富谷市富谷坂松田30番地
電話 022-358-3111(代)
URL http://www.tomiya-city.miyagi.jp/
対談日:平成30年3月20日(火)

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